高齢者の便秘

高齢者の便秘の原因はさまざまであり、加齢に伴う体の機能低下(排便に必要な筋力の低下、便意を感じにくくなること、加齢による腸の蠕動運動の低下)、食生活の変化(食事量の減少、食物繊維の摂取の低下、水分の摂取不足)、運動量の減少、服薬中の薬剤(降圧薬、抗うつ薬など)の影響によって便秘になりやすくなります。
また悪性腫瘍などの疾患が便秘の原因となることも少なくありません。特に高齢者は水分や運動不足が顕著になりやすく、便秘のリスクが高まりがちです。また便秘が慢性化しやすく、長期化すると腹部膨満感や食欲不振、ときには認知機能の低下などを引き起こす可能性もあります。ご自身のこころがけで便秘を予防、改善できる対策もありますのでご紹介していきましょう。

高齢者の便秘の対策

便秘の予防と改善には、規則正しい生活習慣やその見直しが大切です。以下の対策を日常生活に取り入れることで、便秘を軽減することが期待できるかもしれません。

1. 規則的な排便習慣をつくること

    • 毎日、決まった時間にトイレに行く習慣をつけることで、排便リズムを整えます。
    • 便意を我慢せず、できるだけ早くトイレに行くことが大切です。

2. 食事の工夫

    • 一度にまとまった量の食事を摂ることが難しい場合は、回数を分けて必要な栄養を確保することも方法の1つです。
    • 高齢者に必要な水分摂取量は1日約2Lが目安で、飲み物から1L、食事から1Lを摂取することが推奨されます。
    • 食物繊維の摂取を意識し、野菜や果物、穀物類をバランスよく取り入れましょう。
    • 腸内環境を整えるために、プロバイオティクス(善玉菌)を含む発酵食品(納豆、ヨーグルトなど)や、プレバイオティクス(善玉菌の栄養)となる水溶性食物繊維(オーツ、バナナ、こんにゃくなど)を積極的に摂取することが有効です。
    • ビタミンB群やビタミンC、E群を含む食品(バナナ、りんご、ナッツ類)も腸の健康維持に役立ちます。

3. 水分補給

    • 朝起きたらコップ1杯の水を飲むことで腸の働きを活性化させます。 水分摂取が難しい場合は、水分を多く含む食品やスープで必要な水分を補うことも効果的です。一度に大量に飲むのではなく、こまめに分けて摂取することがポイントです。

4. 適度な運動

    • 散歩や軽いストレッチ、体操など適度な運動を取り入れることで腸の動きを促します。
    • 骨盤を動かす運動や腸腰筋を鍛える運動、腹式呼吸なども便秘改善に効果があります。

5. 十分な睡眠の確保とストレス管理

    • リラックスした状態で副交感神経を優位に働かせることで腸の運動を促進することができるため、十分な睡眠を確保しましょう。
    • ストレスを軽減することで、自律神経のバランスを整え、腸内環境の改善につながります。

6. 疾患の有無を確認

    • 便秘が長期化した場合や、急激な便通の変化が見られた場合は、医師に相談し、悪性腫瘍や腸閉塞などの疾患の有無を確認することが重要です。

以上のように、高齢者の便秘は多くの要因が絡み合って発生しますが、日常生活の中で適切な対策を講じることで予防や改善が可能です。

《監修》東京医科大学病院 糖尿病代謝内分泌内科

伊藤真理子

2009年、東京医科大学病院 糖尿病代謝内分泌内科入局。
2011年、東京都恩賜財団昭島病院内科。
2017年、医療法人財団順和会山王病院糖尿病内分泌内科を経て2018年より現職。
日本内科医認定医、日本糖尿病学会専門医、日本医師会認定産業医、日本内科学会指導医。

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